フランス人から見たガウス型の結論 アンジェニュー M1
アンジェニュー Angénieuxが設計したM1が特許申請されて残っています (仏特許 FR1077189、米特許 US2701982)。口径はf1.0で画角は記載されていません。十分な品質が保たれているのは半画角18度ぐらいです。50mmは23度になりますが、実際に製造されたのは50mmで、映画のハーフサイズでは25mmです。f1.0とf0.95は結構差があります。収差が大きく増えます。それでもf0.95に変えて製造されたようです。絞りを差し込む隙間がf0.95で物理的にギリギリなので、できる限り口径を大きくしたようです。この後、放射能ガラスを使うなどで若干の変更を行い、明るさを僅かに稼いだと言われています。これはM2だったのかもしれません。
M1は世界で最初にF1.0に到達したレンズと言われています。NASAのアポロ計画に提供されたものでした。宇宙でとにかく明るさが欲しかったということなのだと思います。しかし収差が残っているのでかなり丁寧に性能を高めたのがM2だったようです。宇宙で背景のボケが汚れるのは資料として撮影する以上は困るでしょうから、我々地上でやっているのとは要求が違う筈です。M2は50mm f0.95のままで、物理的長さが結構伸び、まるで望遠レンズのようになっています。ですからガウス型ではないのでしょう。おそらくですが、英ダルメイヤー Dallmeyerによる44年の設計を取り入れた可能性があります (GB572086)。これは現代の言い方ではレトロフォーカスで、特許の中では「ブルッケ タイプ」と説明されています。バックフォーカスが非常に長い特徴があるとも説明されています。この物理的長さで52mm f2.8、画角は45度とあります(実際の焦点距離は56mmぐらいのようです)。この方が収差補正しやすかったのでしょうか。アンジェニューが最も得意のレンズ構成ですし。しかしM2に関しては実際のものを未確認なので推測になります。現代の我々にとってM2は、標準のレトロフォーカスという珍しさ以外には特に興味を惹く要素はありませんが、この明るさでこの性能ですから凄いものではあると思います。しかしおそらくハーフサイズしかありません。
アンジェニュー Mは、ガウス型に対し、前後に1枚ずつエレメントを増やしています。ガウス型はSです。おそらくS1~S6、キノ?のS21(f1.5)、S41(25mm f1.4, 75mm f2.5)があります。中大判レンズを合わせるとまだあると思います。このナンバーは設計の判別で、同一ナンバーで異なる焦点距離のものもあります。かなり研究を重ねて決定していたようで、ボツになったプロトタイプが市場に流出したりもしています。S1は端正な写りでf1.8、それに対しS2は非常に絵画的です。S3以降はその中間でS5でf1.5になったようです。この中でアルパに採用されていたのはS1です。ボケ味が際立っているのはS2とM1だろうと思います。S2の設計は見つかりませんがM1はあるので、こちらを復刻することにします。
f0.95ですが、光線が乱れてよくわかりません。
そこで近いところ、でもないですが、f1.2で確認します。そうですね、こんな感じでしょうね。
収差はf0.95です。優秀なレンズとして作られた印象はありますね。