映画用にどのレンズ構成を使うのかは難しい問題です。スチールであればガウスが最もバランスが良いようですが、映画でも同じなのかもしれず、英クックではスピード・パンクロでガウスを採用しています。しかしガウス以外でも良いものはあります。クックでは1929年にペッツバール型を映画用に設計しています (英特許 GB329144)。これはおそらく販売されていません。スチール用でも使えるとあります。このレンズ構成を見て俄にペッツバールとは思われませんが、特許にそう説明されています。
口径はf1.8で指定されています。画角はわからないのですが、半画角は15度と思われ、焦点距離は75mmです。これを20度ぐらいまで広げるとキノ・プラズマートとそっくりです。以下にクック、プラズマートの順に並べています。しかしクックの設計で画角を広げると周辺があまりにもボケ過ぎて使い物になりそうにありません。収差図では同じでも違う設計です。しかしキノにおいて、ドイツ人、英国人共に同様の収差を採用するということは最終的な結論はこのあたりにありそうです。
そもそも、キノにペッツバールという考えはどこから出てきたのでしょうか。英特許 GB258092では、同じ設計者 ウォーミシャムが1925年に申請したペッツバール型を使ってのプロジェクターレンズについての解説があります。ペッツバールにレンズを追加するパターンを図示しています。用途は写真その他にも可能とありますので確認することにします。データは2つあり、1つ目のペッツバール型に対し2つ目で1枚増やしています。いずれも100mm f1.5です。
1929年にはさらなる改良型が英特許 GB333065で示されています。100mm f1.48でした。
すぐに1930年にさらなる改良型が英特許 GB342889で申請されています。100mm f1.5。クックにおいてはペッツバール型とエルノスター型はあまり区別されていないように見えます。
1938年には明るさを犠牲にしても枚数を減らした構成を英特許 GB517386で公開しています。100mm f2.0とf2.1です。同年に英特許 GB523218で高屈折率ガラスを使った新設計を3つ発表していますが、屈折率がどれも2.0を超えるものを使っているのでこれは検証しません。
戦中の1940年には明るさを増した構成を英特許 GB542508で公開しています。どちらも100mm f1.4です。
1942年の設計では暗くなって複雑になっていますが、これはプロジェクター用とは書かれていません。写真用とあります (英特許 GB556402)。50mmは実質無いように思いますが、少し破綻するまで50mmで出してみました。どちらもf2です。産業用という感じがします。戦争で使うものだったのでしょうか。
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