テイラー・ボブソンのウェブサイトにアヴィアー Aviarについての説明があります。
第一次世界大戦で空中偵察、航空写真撮影用レンズはツァイス製が使われていました。敵国の製品だったため民間から政府が買い上げていました。しかしクックがアヴィアーの設計に成功し、王立写真協会より最高品質との評価を受けました。アヴィアーの技術は1924年に一般のカメラ用レンズに応用され、1962年まで愛用されました。
こういう説明です。第一次大戦のものでは、かなり精緻に撮れるものだったのでしょう。見つかったのは1917年のものなので評価されたのはその設計だったと思われます。その次に改良と思われる特許は1928年のものなので、ここで言及されている24年のものはどういうものかわからなくなっています。
クックは、設計師のウォーミシャムの名義でアヴィアー型とその派生をかなり多数公開しています。それらはすべて大判用なので我々が転用するとなるとガラスが薄くなりすぎて活用できるものではありませんが、英特許 GB537237に掲載の最後の設計のみ使用可能です。これは1939年末に申請されたものですので、戦前から開発が続けられてきたものと思われます。そしてその後は途絶えています。以下に発展の流れを順に示していますが、この経緯を見るに、39年の最後の設計が一般のカメラに転用されたものの最初ではないかと思います。その後はもう改良されなかった可能性もあります。収差図と使用ガラスなどを比較した印象では、ディテールが溶けるような、それに対して背景が僅かに硬質な、そういう感じがします。我々のクックに対する印象では、とにかく対象を艷やかに磨き上げたようなそんなイメージですが、これでそういう感じが出るのでしょうか。
第一次大戦時に設計されたものは、英特許 GB113590です。1つ目の風景用が40mm f4.5、2つ目の肖像用が65mm f4.5です。いずれもガラスの厚みがないので大判用です。確かに優秀だったというのはよくわかります。
10年後の1928年に出願されたのは、英特許 GB312536で40mm f4.5でした。大恐慌の前頃になります。
そしてまた大戦が始まると開発の必要性があったのか、2つの特許を出願しています。1つ目は1941年、英特許 GB549690です。ここに2つのデータがあり、最初は45mm、次に50mmでどちらもf3.5です。
2つ目は1942年、英特許 GB561943です。ここにも2つのデータがあり、最初は35mm f2.5、次に50mm f3.5です。
この2つの特許以外にそれに先立って趣向の異なるデータが39年12月に出願されています(英特許 GB537237)。5つの設計が記載されています。1: 50mm f3.5、2: 47mm f3.5、3: 43mm f2.5、4: 41mm f2.5の順番で明るさと画角が増しています。その代償として4番は全体にゆるやかな湾曲が現れています。5: 50mm f2.5 最後に50mmに戻してf2.5です。これが一番最初に示したものです。徐々にアヴィアーからエルノスター型に進化していることがわかります。しかし変化したものはレンズ構成だけではないように思えます。想定している用途にも変化があったのではないかという感じがします。アヴィアーは正確な描写が重要なレンズでしたが、エルノスターでは収差が増えており、本来50mmでは半画角が22.5度あればフルサイズを覆えますが、これは21.3度です。このように焦点距離と画角の間にあるバランスが崩れています。こういうものは良いものが多い印象です。
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