無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

ドイツ大判レンズの世界をコンパクトにした
ヘリゴン「香箋」G7 50mm f1.9

2015.11.16

これは眼の延長と言っても良い程である

 ローデンシュトックは19世紀からレンズを製造していますが、第一次世界大戦後の不況期に販路を拡大するために眼鏡を作るようになりました。現代でも写真レンズと眼鏡の両方を製造している数少ない企業です。人間の眼に直接関わるものや、写真レンズの中でも特に高品質な大判用を作ったりとドイツで最も技術力のある光学会社です。技術というと冷たい印象がありますが、ローデンシュトックの高度な製品を見ると暖かみを感じます。「人の為の技術」といったキャッチフレーズはファクトリーに好まれますが、まさにそれはローデンシュトックのためにあるのではないかと思える程です。世界に数多くの50mmレンズあれど、ヘリゴンに匹敵するものは僅かしかありません。むしろその完美さが弱点、人間というのは贅沢なもので、完全だったら欠陥美が欲しくなるものですが、それを前提にした段階においても、いや、そうだからこそ、もはやこれ以上何を望むのか?といった言葉はヘリゴンにこそ捧げられるべきでしょう。

 その傑作のデータは特許申請されていました(独特許 DE1128677)。f1.6ですが、おそらくヘリゴンでこの口径のものは出ていません。

ヘリゴンの光学図
ヘリゴンの縦収差図f1.6

 これをf1.9に変えます。ガラスのコバも製造しやすい厚みになりますし、球面収差はわずかにマイナスです。これが実際に世に出ていたf1.9のヘリゴンでしょう。こういう収差配置のレンズは儚い写りになるような気がします。オールド・ライカに似ています。
ヘリゴンの縦収差図f1.9



 関連するその他の設計も参考に見ておきます。ガウス型がまず提示されて、それをゾナー型に変化させていく理論を説明したものがあります。55年設計の少し古いものです(独特許 DE961136)。これを50mmにスケールダウンして見てみます。f2に設定されていますが光学図を見るとf2ではギリギリです。もしかするとこれはレチナに付けられていたものかもしれません。

レチナヘリゴンの光学図
レチナヘリゴンの縦収差図


 もう1つは望遠で95mm相当ですが(独特許 DE1166498)、用途は汎用でキノに使う場合は、との説明もあります。f1.2で前玉が80mm程ある重量級です。若干長いですが、これも魅力あるでしょうね。

望遠ヘリゴンの光学図
望遠ヘリゴンの縦収差図

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